広島高等裁判所松江支部 昭和28年(う)164号 判決
所論に鑑み、訴訟記録及び原裁判所が取調べた証拠を精査するに、原判決には、本件犯罪事実認定の証拠として、被告人等の公判廷における所論摘録のような各供述をも挙示してあるけれども、原審が右供述を採用したのは単に金銭を授受の事実に関する自白として、これを採用したものにしか過ぎずその趣旨までも含めて採用したものでないことは、原判決挙示の他の証拠と彼此対照して検討すれば自ら明白である。原判決挙示の関係証拠を綜合すれば、被告人等の関係者との間に授受された金員がいずれも立候補者高橋円三郎の当選を得しめる目的を以てその選挙運動の報酬及び費用として供与されたものであることが窺われる。原審が単に報酬として供与されたものであるとしたのは聊か誤認の譏を免れぬけれどもこゝにいう費用とは適法な選挙運動の費用ではなく選挙運動に対する報酬や投票の買収費を含む違法な運動資金の意であるからその違法性の点において報酬と何等異るものではない。従つて報酬と右の意味における費用とを含めて供与された事実を単に報酬のみの供与と認定したからといつて判決に影響なきこと明白である。論旨は採用の限りでない。